栃木県にある那須連山では、紅葉が例年よりも1週間ほど早い見頃を迎え、多くの登山客でにぎわいました。紅葉は夏の日照時間が長いほど色づきを増すそうで、猛暑だった今年はいつにも増して見事な赤いカーテンが全国で見られそうです。行楽シーズンにちなんで、ふらっと一人旅に出た時にありがたい、ビジネスホテルに関するビジネス書を紹介します。
巡るサービス―なぜ地方の小さなビジネスホテルが高稼働繁盛ホテルになったのか
埼玉県にあるホテルグリーンコア。決して大きくはない独立系のビジネスホテルですが、大手チェーンにも押されることなく増収増益を続けています。一時はリニューアルによって稼働率が大きく落ちるなど危機に陥りましたが、あえて「お客さまに積極的に関わっていく」という、ほかと一線を画すスタンスをとることで、リピーターを獲得し復活を遂げました。本書ではドキュメンタリー風に、グリーンコアの従業員が一丸となって、ホスピタリティ改革に取り組んでいった姿が描かれます。どうやって従業員の意識を改革するか、自分で考えやる気を引き出させるかについても業界を超えた示唆的な内容を含んでおり、経営者の方も一読の価値ありです。
1泊4980円のスーパーホテルがなぜ「顧客満足度」日本一になれたのか?
スーパーホテルは、全国に108店舗を構えるビジネスホテルチェーンです。顧客満足度調査で高級ホテルを上回り第1位、リピート率70%と利用者から絶大な支持を集め、現在は常にキャンセル待ちが発生するほどです。本書の著者である会長の山本氏は「とんがること=特化すること」が成功の秘訣であると考え、「ぐっすり眠れること」に徹底的にこだわり抜いたといいます。また、大型チェーンでありながら、マニュアルに頼らず、従業員一人一人がお客さまのことを考えて行動する「自立型感動人間」を目指す姿は、ディズニーのホスピタリティにも通じるものがあるように感じました。スーパーホテルが決して低価格だけで選ばれているわけでないことがわかります。
なぜビジネスホテルは、一泊四千円でやっていけるのか
ホテル業界は45年間で客室数が33倍に急拡大しているそうです。なお拡大を続けるビジネスホテル業界の現状や経営努力について、ホテルコンサルタントとして多くのホテルに関わってきた著者が裏話やエピソードを交えながら解説します。著者は「顧客が重視している部分に特化していないホテルは今後淘汰される」と予想しており、上で紹介したホテルグリーンコアとスーパーホテルが、それぞれ一部分に特化して繁盛していることを考えると、正にそのとおりと言えそうです。肩肘をはらずに読める一冊なので、旅のお供にも最適かもしれません。