仏教をベースにした経営論からお寺の運営まで

小池 龍之介さんなど、僧侶とお寺にまつわる3冊

「坊主丸儲け」という言葉がありますが、これは世間が不況に陥っても布施がもらえるなど実入りがいいために言われるようになったそうです。また、お寺は社会的な貢献度が高いことから、税金面でも優遇されているなど、その内情に興味を持つ方もいるのではないでしょうか。そこで、お寺の運営マニュアルや僧侶が書いた経営論など、僧侶やお寺にまつわる書籍を紹介します。

『お寺の教科書』によれば、お寺を運営するとは、今日まで寺が生み出してきた価値を再評価し、不足している箇所を補ったり、利点はそのまま残すことだとしています。本書は、急速に変化する現代社会の中で、これからのお寺をどう運営すべきかが学べるお寺業マニュアルです。お寺の「これからの百年」を拓くべく、お坊さん向けに催されているお寺の経営セミナー「未来の住職塾」の内容からエッセンスを凝縮しています。セミナーでは、それぞれのお寺の強みを発見し、それをどう伸ばして活かすかを考えることで、お寺の本当の存在価値や未来が見えてくるとしていますが、それらの考え方はお寺の運営だけでなく、日本人の行く末までを見通すようなものであるようにも感じました。これからお寺作りをする上で必要となる、「お寺の使命」や「お寺のビジョン」を考えるためだけでなく、日本人の未来を考えるためのヒントがあります。

『僧職会計士の経営道』の著者は、公認会計士として一部上場企業の社長となったのちに、母親が亡くなった事をきっかけに僧職に入ったという異色のキャリアを持っています。本書では、現在の日本におけるビジネスの問題は仏教の教えを用いて解決できるという視点を紹介しています。なぜ仏教の教えをビジネスに活かせるのかと言えば、混迷する時代を生きていくビジネスパーソンにとって、働き方や生き方のヒントになるばかりか、自らや会社をあるべき姿に変えてくれる、身近な道しるべでもあるからだとしています。著者は仏教の教えに基づいた「中道の経済学」や」「自利利他」の精神を持つことこそ今後の日本に必要なものではないかと訴えています。これからのビジネスや経営、そして人生に対するヒントとして、仏教の教えを参考にしてみるのもよさそうです。

経営や運営といったビジネスをうまく回すのに欠かせないのは、精神の安定です。ビジネス書という範疇からはややはずれますが、精神の安定のために、五感を大切にした生活の重要性を説くのが『考えない練習』です。本書では、現在の日本人が常にさらされている社会における不安やイライラは仏教の教えに基づいた練習によって直すことができるとしており、そのための方法を解説しています。また、脳研究者の池谷氏との対談では、心に関する仏教の教えと最新の脳科学の発見の内容が一致していることなどがまとめられており、心と脳とは強い結びつきがあるようです。

実は弊社の近所には、偶然にも僧侶がバーテンダーの「坊主バー」があります。カウンターごしに僧侶に人生相談などもできるそうです。ビジネス/プライベートを問わず、宗教との接点というのは意外と身近にあるものなのかもしれません。


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