一般的ではなかったものが、知らず知らずのうちに世界に広がり、なくてはならないものになる――例えばSNSやスマートフォンなどは、ライフスタイルそのものを変えてしまったイノベーションと言えるでしょう。このようなイノベーションはどうして、どのように生まれるのか、さまざまな切り口から迫った3冊を紹介します。
イノベーション・マネジメントの古典
まずはイノベーション分野における古典とも言える『イノベーションのジレンマ』です。高品質で顧客満足度の高い製品やサービスを「持続的イノベーション」として提供する、業界のトップ企業。しかし、その優れた経営は、新興企業による「破壊的イノベーション」に太刀打ちできず、失敗へ向かってしまうという、トップ企業に必ず訪れる「ジレンマ」を理論として紹介したものです。イノベーション・マネジメントという領域を切り開く論考とともに、そのジレンマを解決するための処方箋を示しており、イノベーションとの接点があるすべての方にとって必読の1冊と言えるでしょう。
消費者発のイノベーションにより生まれた製品の数々
これまでイノベーションの産物は、大企業から生まれてくることが多かったのですが、インターネット技術の進歩により、その門戸が消費者にも開かれるようになりました。『ユーザーイノベーション: 消費者から始まるものづくりの未来』では、そのような消費者(ユーザー)の叡智を取り込んで新しい製品やサービスの開発を行う、企業のあり方を説いたものです。マウンテンバイク、マスキングテープ、クックパッド、カヤック、初音ミク、レゴ、無印良品、エレファントデザイン、イノセンティブ、3Dプリンターなど、数多くの事例も取り上げられているので、これからのイノベーションを考えるうえでのヒントとなりそうです。
世界を驚かせるイノベーションを起こすためのしくみ
革新的なビジネスのプロデュースや自社内で数々のプロジェクトを同時進行させ、すべてを黒字化しているという、異色の研究者集団企業「リバネス」。『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』は、世界を驚かせるようなイノベーションを起こすための独自の仕組みである「QPMI」サイクルを中心に、事業内容などを公開した1冊です。このQPMIでもっとも重要なのは「P」。パッションを意味し、社員個人が持つ「やりたい!」という気持ちがこのサイクルには不可欠であると説き、それによって革新的なビジネスは生まれるとしています。このサイクルの考え方は、ベンチャーの起業家や、新たに立ち上げる事業に携わる人に参考となるでしょう。