講義の前に

講義の前に

田喜

田喜 明(でんき・あきら)(32)

慶早大学ビジネススクールの生徒。慶早大学政経学部卒業後、大手電機メーカーに就職して、AV家電の国内・海外営業部署に所属。同社が韓国メーカーなどの猛追を受けて、AV家電部門のリストラを行った際に早期退職し、一念発起してMBAに入学。熱血漢で体育会系。

暮井 惇(くれい・あつし)(47)

慶早大学 経営戦略研究科 教授。国立大学卒業後、経済産業省にキャリア採用で入省し、主に国内メーカーの振興策を担当。課長補佐まで務めた後、HBSに入学し、クリステンセン教授の日本の一番弟子となる。生真面目でちょっと気弱だが、国を想う心が強い。

銀戸 絵里(ぎんこ・えり)(29)

慶早大学ビジネススクールの生徒。国立大学を卒業後、大手銀行に就職して、主に国際金融業務に従事。同行のプログラムで選ばれ、MBAプログラムに入学。中学、高校、大学とほぼ首席で通し、ちょっと見、冷たく見えるが、さみしがりやで結婚願望強し。

田滝 揚造(たたき・あげぞう)(54)

慶早大学ビジネススクールの卒業生組織(アルムナイ)の世話役。首都圏を中心に10店舗を展開する食品スーパーチェーンの創業者で、「50の手習い」でMBAに入学して、昨年無事修了。見た目は怖いが、義理人情に厚く、世話焼き。

八代 正木(やしろ・まさき)(67)

慶早大学ビジネススクールの学長。エクソン、シティバンクなどの外資系企業で取締役や社長を歴任した後に、ビジネススクールの教授に転じる。同校を世界に通じるビジネススクールに育て上げるのが夢。実務家らしく、効率を重視し、教授陣にはっぱをかける。

イノベーション=技術革新?

田喜:明日から、いよいよ講義が始まりますね。


銀戸:そうですね。でも私、ついていけるかしら、結構厳しいって噂だし、この学校。


暮井:何を仰る、入学試験トップの銀戸さんが。


田喜:あ、暮井先生、先生の「知識ゼロからわかる イノベーションのしくみ」の講義、楽しみにしています。でも、ビジネススクールの講義にしては、結構、思い切ったタイトル付けましたね。


暮井:学長の八代さんの意向だよ。「難しいことを難しく解説するのでは価値がない。難しいことをわかりやすく解説してこそ価値が生まれる」というのが彼の口癖でね。


銀戸:しかし、最近、「イノベーション」という言葉もずいぶん一般的になりましたね。


暮井:たしかに、NHKの朝のニュース番組とかで、アナウンサーが「イノベーション」なんて言葉をふつうに使っているのを見ると、隔世の感があるよ。ただ、その意味を誤解している人も多いみたいだ。


銀戸:と、言いますと?


暮井:うん。日本では「技術革新」と訳されることが多いから、新しい技術を発明することと誤解されがちなんだけど、ほんとうの意味はもっと広い。イノベーションというのは、これまでのものや仕組みに新しい技術や考え方を取り入れることで、新しい価値を生み出し、ひいては社会に大きな変化をもたらすことなんだ。


イノベーションとは

田喜:何か、わかったようなわからないような感じです。具体的には、どういったことがイノベーションに該当するんですか? 暮井:それは、次回の講義を楽しみにしてください。 田喜・銀戸:わかりました〜。 (次回更新予定 2014/4/21)

イノベーション(innovation)の語源は、ラテン語の"innovare"(新たにする)(="in"(内部へ)+"novare"(変化させる))とされています。日本語ではよく技術革新や経営革新などと言い換えられていますが、イノベーションはこれまでのモノ、仕組みなどに対して、全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすことを指します。

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