毎月の支払額で大きな位置を占める「家賃」や「住宅ローン」、扱う額が非常に大きいのに一生に一度経験するかしないかの家の売買。
なのに、一般人は不動産業界の仕組みや価格決定メカニズムをほとんど知りません。
乱暴な表現をさせてもらうと、消費者が無知なのをいいことにこれまでボッタクリが横行していたのがこの業界なのではないだろうか?と思わせるような本が続々と発売されています。
空き家と空室が増え続ける日本
「『空き家』が蝕む日本」(ポプラ新書)は、不動産デベロッパーの支店長として幅広く不動産売買業務全般を経験した著者による、空き家率40%時代の処方箋です。つい先日、発表された「住宅・土地統計調査」では、空き家率は13.5%と過去最高を記録しました。これは戸建てだけでなく、賃貸用のアパートなども含んだ数字です。今後も人口減少、過疎化、都市の一極集中などで空き家は増え続けるとみられているので、40%という数字はあながちオーバーではないでしょう。
本書の第1章では著者の実体験から不動産査定や、不動産会社に家の売買を依頼した際、現場ではいかにいい加減なことが行われているかということが生々しく描かれています。
また、新築一辺倒の政策により空き家がなぜ増えてきたのか?という背景も詳しく説明されています。空き家が増えるなかで新築の家が増えるということは、簡単にいうと住宅が供給過剰になるということです。ということは、購入した家がすぐに値下がりしてしまったり、中古を購入した方が実は得ということもありえます。
これから家やマンションを購入しようという人は必読です。
「マンションを相場より高く売る方法」(ファーストプレス)は、もう少し実践的な内容です。
通常、マンションや家を売ろうとする人は、不動産の仲介会社に委託することになります。普通に考えると、仲介会社は手数料(価格と連動する)を稼ぐために、より高い値段にするだろうと思いがちですが、そうでないケースも多いのです。
詳細は本書を読んでいただきたいのですが、この本でも「仲介会社はこんなことをしているのか!?」と驚き呆れるような実態が描かれています。
著者によれば、場合によっては、マンションを相場より500万円以上高く売ることも可能とのこと。現在、マンションを住み替えようという人は読んでおくべきでしょう。
大家さんと交渉すれば家賃は下がる
「家賃を2割下げる方法」(三五館)は家賃を払っている人が無理せずすぐに実践できる家賃引き下げテクニックが満載の本です。
本書によれば、バブル崩壊後、地価は下がり続けているのに、家賃は高止まりしています。家でもアパートでも空き家(空室)が増えているなかで、賃料が下がらないというのは明らかにおかしな現象です。また、デフレといわれ、様々なものやサービスの価格が下がっているのに、なぜこのようなことが起きるのでしょうか?
それは、著者が推測するように、普通の人が家賃の値下げ交渉をしないというのも大きな要因ではないか?と考えさせられます。
本書によると、商業地におけるオフィス賃料は地価と連動した動きをみせています。これは、オフィス賃料を決める際、相場や地価をもとに借り手と貸し手が交渉した結果、市場メカニズムが働いた結果でしょう。
「大家さんと揉めると面倒」「家賃なんて下がる訳ないでしょう」と思い込む人は多いかもしれません。日本人はもめ事や交渉ごとが苦手といわれますが、各自が情報収集や交渉をしないことでぼったくられるのはもったいないことです。
これは私自身の個人的な経験なのですが、大家の都合でアパートの退去を迫られた際、先方が提示した引っ越し費用があまりにも低かったので区役所の無料法律相談で相談したところ、実際はその倍をもらうのが当たり前だと知らされ(裁判の判例も出ている)、危うく損をするこころでした。また、自分が住んでいるアパートの家賃が周囲と比べて高いことが分かったので大家と交渉したところ家賃があっさり下がった経験があります(ただし、露骨に嫌な顔をされました)。
話は脱線しましたが、この本には貸し手と借り手の関係が法律上どうなっているのか、揉めたときはどう対処すべきなのかという情報も充実しているので、全ての家賃を払っている人に勧めたい1冊です。
以上3冊の本を紹介しました。このような本が出ること自体、不動産業界が変わらざるを得なくなってきた証といえるかもしれません。不動産についてしっかり勉強し、対処してお金を貯めたいものです。