申し訳ない、このタイトルをつけたのは私です。

翻訳書の原題と邦題をチェックする

海外の書籍を日本語に訳して出版する際には邦題をつけることになります。その邦題のつけ方はいろいろで、原題をそのままカタカナにしたり、一部を使ったり、場合によっては、原題から1文字も使わないということもあります。さまざまな翻訳書の原題と邦題をチェックしてみました。

翻訳書のタイトルのつけ方には、代表的なものとして3つのパターンが挙げられます。

1 原書のタイトルを使う

2 原書のタイトルから一部を使う

3 書籍内容から新たなタイトルを付ける

それぞれの例を見てみましょう。

1 原書のタイトルを使う

1の「原書のタイトルを使う」は、さらにその中で2つに分かれています。1つは原書が英語の場合に多いのですが、そのタイトルをカタカナで表記するというものです。この例としてすぐに思いついたのは『リーン・スタートアップ』。原書のタイトルもそのまま "THE LEAN STARTUP" です。この書籍の出版とともに、日本でも「リーン・スタートアップ」という用語と手法が浸透したともいえる1冊です。

もう1つは、タイトルを日本語訳するというもの。例えば『2050年の世界』。原書のタイトルは "Megachange : The World in 2050" なのですが、The World in 2050を日本語にしたことで、よりわかりやすい邦題となっているように感じます。本書が出版された時期は、タイトルに年号が入った翻訳書が数冊あったのですが、年号が入ることで、どの時期の話なのかというのが具体的にわかるという利点もあります。

2 原書のタイトルから一部を使う

2の「原書のタイトルから一部を使う」ですが、例えば『ツイッター創業物語』。こちらの原題は "HATCHING TWITTER"で、当たり前ながら、「ツイッター」は英語のカタカナ表記なのですが、「孵化する、(ひなを)卵からかえす」という意味のHATCHINGは、「創業」という言葉で表現されています。個人的には、原書のカバーの「金の卵からヒナがかえる」イラストワークが面白かったのですが、「孵化する」よりは「創業」の方が本書の内容を伝えられているので、言い得て妙な邦題だと思いました。

もう1冊例を挙げると『1万円起業』も2の例でしょう。こちらの原題は”THE $100 STARTUP" で、1の例に区分してもよいのかもしれませんが、100ドルを「1万円」、STARTUPを「起業」としたのがミソで、より書籍の内容が読者にとって具体的になった好例です。

3 書籍内容から新たなタイトルを付ける

最後の3「書籍内容から新たなタイトルを付ける」ですが、例えば『ハイコンセプト』。原題は”Whole New Mind”で、邦題になった「ハイコンセプト」は、本書の中で使われている言葉です。読み進めていくと、この「ハイコンセプト」とは、「まったく新しいことを考える(人)」の意味であり、この本の主題です。内容を精査した上で付けられた邦題であるということがわかります。

さらに、用語ではなく、内容をそのままタイトルにもってきているものもあります。例えば、『小さなチーム、大きな仕事』の原題は"REWORK”。本書は、十数人のメンバーで数百人のクライアントを抱えるソフトウェア会社のカリスマ経営者がビジネスの心得を示すものなのですが、その心得によって経営されているのが、「小さなチーム、大きな仕事」そのものなのです。

駆け足でしたが、翻訳書の原題から、邦題がどのようにつけられているのかを探ってみました。翻訳書には、コピーライトページなどに、かならず原題が書かれています。その原題から、この邦題がどうしてつけられたのかを考えたり、邦題から原題を推測したりするのも面白いものです。ぜひ試してみてください。

ちなみに、このコラムのタイトルでもじった『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』の原題は、”I'm Sorry I Broke Your Company” です。邦題を見たとき、いったいどんな原題からこれをひねり出したのだろうと思ったのですが、原題がそのまま邦題になっていることに驚きました……勝手に想像して、申し訳ない!


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