『まず、のび太を探そう!』で 大学生がビジネスモデルを使いこなしてみたら

世界一わかりやすいビジネスモデル入門(4)

この連載は、『まず、のび太を探そう!』で紹介されている、「9セル」を使って、大学3年生が世の中を斬ってみるという企画です。

◎本日の担当
原由梨奈(ニックネーム:ゆりな)
趣味:旅行の観光本を読むこと

◎解決編

あまりにも有名な回転ずしチェーン・スシロー。ネットで調べるだけでも情報は多くとることができます。しかし、それだけにポイントを見誤ってしまうこともあります。

わたしたちの目的は、情報をたくさん仕入れて「ビジネスオタク」になることではありません。 経営者が考えているであろう、筋の通ったビジネスモデルを、経営者の気分になって、ときには憑依させて、ゼロベースで組み立てていく。そんなセンスを身につけたいのです。

その意味で、多すぎるほど情報がある、錯綜しているとも言えるようなテーマは格好の教材となります。

それを選択したのが、ゆりなさんです。

今回は、前回の反省も踏まえて、顧客価値提案のHowを見直し、全体を9セルで説明してみましょう。


前回問題になった顧客価値のHow。これはお客様に対してどのようなプロモーションとプライシングを見せられるかということです。つまり、代替の解決策と比較して、ということですね。

なので、訴求ポイントは「100円でうまい寿司をはらいっぱいたべられる」ということでよいのです。

ただし、代替ソリューションが何かということが問題になります。これは高級すしではなく、お手頃な食事になります。ですので、次の図のようになります。


そして前回、ゆりなさんが書いたような、原価率50%以上という話は、「利益」の「What」にかかわる部分です。また、セントラルキッチンの廃止や、鮮度を守るためのレーンについては、顧客価値提案を支える「プロセス」の話です。 つまり、スシローを支える大切な要因ではあるものの、お客様には直接は関係ないことだったんですね。

大事なのは、どこを考えるべきなのか、ということ。9セルは、ビジネスモデルを整理立てて考えるためのものですから、今自分が見ているものがなんなのか、何を考えるべきなのか? それをきれいに整理し、棚にきちんとおさめていくことが大切なんですね。


ということで、ゆりなさんがやりなおした9セルをもとに、プロセス部分を見ていくことにしましょう。

つまり、うまい寿司を腹いっぱい提供するために、いったいどのような仕組みをもっているのか。さきほどのセントラルキッチンの話などもありますが、ゆりなさんは面白い指摘をしてくれました。


そう、ブランディングを、TVなどのメディアを使いながらやるということ。 つまり、くむべき相手として大切なのが、メディアなんですね。

広告費を抑えながら、話題をつくるというやり方。テレビでもスシローをたくさんみますね。そのリストが次の通りです。


さらに、スシローの強みと弱みを分析してみると、おもしろいものが見えてきます。


これはVRIO分析をして出てきたものですが、実際に職人出身の社長さんからつくられる寿司自体に強みがあります。

しかし、それだけの規模を支える経営力に不安があります。そこはうまく、ブランドやマネジメント力を外部に借りているとのこと。


このあたり、顧客価値提案を届けるまでのフローが、よくかけていますが、ポイントはそれを仕組みの部分とクロスさせるということです。

そのため、スシローはこの弱みを補完するべく、ファンドと組み、あるいはセントラルキッチンを廃止したために、サイドメニューを充実させるべく加工メーカーとも提携し、さらには広告をメディアにまかせるというやり方を貫きます。

つまり最終的には、「寿司そのもの」でどこまで勝てるか、勝負している大変潔いビジネスモデルであることがわかります。

一店舗のお寿司屋さんからはじまった。これは、小規模な商店を営んでいるみなさんとにとっても夢のある、まさに「スシドリーム」を実現した会社ですね。

低価格でおいしいものを提供するスシロー。ライバルも多く存在する回転ずしチェーンにおいて、1位の座に君臨しているこの会社は、きちんと弱みを認識したうえで、その筋のプロと組みながらも、顧客価値提案を実現しています。


普通ならできないことを、うまくやっていく。ビジネスとしては王道の歩み方をしているように思えます。もはや、屈強の王者としての貫録さえ見えます。他社がスシローにどのような戦いを挑んでくるのかも同時に関心がありますね。

ゆりなさん、おつかれさまでした。

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