書店に行くと、ビジネス書籍の棚には「問題解決」を謳った本がたくさんあります。最近のお気に入りは『世界一やさしい「問題解決」の本』という、専門用語はまったく使わないで、MECEやロジックツリーなどのフレームワークの使い方を学べる本です。中学生を対象に書かれている本なのですが、大人にもはげしくお勧めします。
ですが、今回とりあげたいのは、問題解決ではなくて「問題発見」です。
そもそも、何が“問題”なのでしょうか?
問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」
まずは、バリバリのコンサルタントによる問題発見の手法を解説した本から紹介します。本書における問題は「あるべき姿と現状のギャップ」であると定義されています。この問題を割り出すために「問題発見の4P」(Purpose、Position、Perspective、Period)というツールを用いて、目的軸、立場軸、空間軸、時間軸の4つの観点で問題を認識することからはじめます。続いて、MECEや、トレンド分析、+/-差異分析、集中・分散分析、付加価値分析、CS/CE分析などの分析手法を使いながら、発見した問題を深堀りし構造化するプロセスが示されています。
問題を解決する前のフェーズである「問題発見」に重点を置きつつも、コンサルタントが実際に現場で使っている考え方とフレームワークを一気に学ぶことができる一粒で二度美味しい本となっています。
イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」
コンサルタント、研究者、マーケター、プランナーという4つのバックグラウンドを持つ安宅和人氏による、自身が実践してきた「問題の見極め方」をまとめた本です。
「イシュー」は単なる問題ではありません。安宅氏の定義によれば、「2つ以上の集団の間で決着のついていない問題」であり「根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題」です。この2つの条件を満たしていないものは「解決すべき問題」ではなく、時間を割いても無駄だといいます。
この本のオビに書いてある「労働時間なんてどうでもいい。価値のあるアウトプットが生まれればいいのだ」というキャッチコピーが個人的にツボです。根性だけで問題を片付けようと膨大な時間を費やすことを「犬の道」とバッサリ。労働時間をいかに少なくするかに価値があると説きます。残業をしなくても価値のあるアウトプットをする人が評価される時代がくるといいなと思います。
デザインマネジメント
最後は、世界的なデザイン賞をいくつも獲得しているデザイナーさんが書いた本を紹介します。書名の「デザインマネジメント」だけ見てみると、問題発見について書かれていると想像がつきづらいのですが、本書では「デザイン」とはモノの形や色といった意匠デザインにとどまらず、本来は「物事の本質を捉える力」であり、「物事の枠組みを捉え直して再構築する力」であると説明されています。
この、「物事の本質を捉える力」がまさしく「問題発見力」です。何が根本原因でいまの現状が引き起こされているかを把握出来なければ、物事は解決しないということを繰り返し論じています。
その意味でのデザインは、経営まで含んだ一連の企業活動を踏まえた上で進める「デザインマネジメント」の形で進めるべきとし、筆者が企業で実践した事例を取り上げながら、実際にイノベーションを起こすに至った過程を詳説しています。現場の泥臭いやりとりも記録されており、自社の問題を解決したい人に特にお薦めです。